映像制作で一番大事なものは?

映像制作がかつてないほど身近になり、誰もがクリエイターになれる時代。そんな今だからこそ、映像に興味を持つ人たちから「プロの視点が知りたい」「プロとアマチュアの違いは何か?」と聞かれることが増えました。

答えは、とてもシンプルです。 小手先のテクニックではなく、「自分が何を伝えたいのか」という熱量と、その「核心」を最後まで貫き通す力。これに尽きます。

目次

テクニックの前に「感性」を信じ抜け

映像を作ろうとすると、どうしても「どう見せるか」に意識が向きがちです。かっこいいアングル、流行りのBGM、テンポの良い編集。確かにそれらも大切ですが、それらはあくまで表面上のパッケージに過ぎません。

本当に視聴者の心を動かすのは、「なぜそれを作るのか」「どこが面白いと思ったのか」という、あなた自身の感性という名の切り口です。

自分の心が震えていないものを、小手先でかっこよく見せようとしても、画面越しには必ずその「薄さ」が透けて見えます。まずは、自分自身の中にある「これを世の中にぶつけたい」という衝動や感性を、誰よりも自分自身が信じ切ることがすべてのスタートラインです。

モノづくりの壁を壊すのは「核心」だけ

現場でモノを作る過程は、決して綺麗なものではありません。企画が通らない、予算が足りない、機材がトラブルを起こす、そして何より、取材対象者に拒絶される。

映像制作は、挫けそうになる障害の連続です。

その分、厚い壁にぶち当たった時、あなたを支え、前に進ませてくれるのは最新のカメラでも、高度な編集ソフトでもありません。

「結局、自分はなんでこれを伝えたいんだっけ?」という、『核心』です。

ここがブレていなければ、どんな障害があっても別のアプローチを見つけ出し、何度でも立ち上がることができます。

コロナ禍の観光バス会社:ニュースの「数字」に抗う

僕がNHKでディレクターをしていた時の話。

新型コロナウイルスが猛威を振るい、観光業が未曾有の大打撃を受けていた時期。僕は、とある観光バス会社の実態に迫るドキュメンタリーを制作していました。追っていたのは、「ドライバーを解雇クビにする瞬間」という、極めて重く、残酷な現実です。

当然ですが、最初は強烈に嫌がられました。 カメラを向ければ睨まれ、「これだからマスコミは…」「人の不幸を撮って何が楽しいんだ」と厳しい言葉を投げつけられました。心はすり減り、何度も挫けそうになりました。

しかし、僕の中には絶対に譲れない信念がありました。

「このままだと、皆さんは毎日のニュースの中で『コロナで職を失った人たち』という、ただの『数字』として処理されてしまいます。社会全体から見れば、単なる『1』としてカウントされて終わってしまう。でも、僕はそれでいいとは絶対に思いません。」

「皆さん一人一人には、守るべき生活があり、愛する家族がいて、ここまで積み上げてきた人生がある。ただの数字なんかじゃない。社会のシステムや冷たいニュースの枠組みからこぼれ落ちてしまう『個人の尊厳』を伝えたいから、僕はこうして泥臭くドキュメンタリーで残す必要があるんです」

僕が伝えたかったのは、権力や大きな組織の波に飲み込まれそうになっている人々の、血の通った人生そのもの。

この言葉を聞いて、彼らの目の色が変わりました。最終的に、彼らはカメラの前に立ち、その残酷な現実と向き合う姿を撮らせてくれたのです。

あなたの「核心」は何か?

もしあなたが今、映像を作っていて壁にぶつかっているなら、あるいはこれから何かを発信したいと思っているなら、一度立ち止まって自分に問いかけてみてください。

「自分は今、何を伝えたいのか?」

「何が自分の心を動かしているのか?」

どんなに泥臭くても、どんなに不器用でも構いません。あなたの中にある「核心」を見つけ、それを最後まで貫き通してください。その熱量こそが、画面の向こう側にいる誰かの心を揺さぶる、唯一の武器になるはずです。

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この記事を書いた人

井上 大輔のアバター 井上 大輔 映像ディレクター

TBSビジョン→テレビ朝日→NHK→株式会社草莽映像•代表/テレビ歴18年/『クロ現』『Nスペ』『世界遺産』『夢の扉+』など制作/YouTube“経営者ドキュメンタリー”『野望家たち』

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