是枝裕和監督の『プロフェッショナル』を見て感じた、ドキュメンタリーの真髄と制作現場の課題

遅ればせながら、是枝裕和監督の『プロフェッショナル 仕事の流儀』を見ました!是枝さんは僕が最も目標にしているクリエイターなので、ずっと楽しみにしていたんです。

しかし……結論から言うと、表面的で深みのない作品でした。「是枝裕和」という最高の素材を活かしきれず、ただ表層をなぞっているだけという印象です。

冒頭で是枝監督自ら「インタビューは信用しない方がいい」と語っていた通り、言葉にならない瞬間を紡ぐことこそがドキュメンタリーの真髄だと僕は思っています。しかし、本編の核となる言葉はほぼ2、3日のインタビュー素材の切り貼りばかり。残りの展開もナレーションで強引に運んでしまっていました。

かつてテレビディレクターだった是枝さんを取材する重圧は計り知れません。ですが、取材をするのなら、ディレクター自身が現場で是枝さんから何を感じ、どう見たかという「個人の視点」が絶対的に必要です。今回の番組には、それが明らかに欠けていました。

これを見て即座に思い出したのは、かつて『情熱大陸』で蜷川幸雄さんがディレクターに激怒したシーンです。

「今回はどんな計算が?」と事前に答えを欲しがるディレクターの安易な姿勢に対し、「最初から枠にはめて取材しようとするな!」と蜷川さんが一喝したものがありました。今回の番組からも、まさにその「あらかじめ決まった枠」に当てはめて作っているような匂いを感じてしまったんです。

根本の原因は、NHKの制作体制にあると考えています。

現場で取材したディレクターが編集をするのは最初だけ。最後は現場に行っていないデスクやプロデューサーが編集して仕上げてしまいます。こうした分業によるパッケージ制作では、取材対象と深く格闘し、予定調和を超えたリアリティを切り取る力は一向に育ちません。ドキュメンタリーを作れるディレクターが減っている現状を如実に感じる内容でした。

これなら、是枝さんの著書『映画を撮りながら考えたこと』を読む方がよほど面白いです。

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この記事を書いた人

井上 大輔のアバター 井上 大輔 映像ディレクター

TBSビジョン→テレビ朝日→NHK→株式会社草莽映像•代表/テレビ歴18年/『クロ現』『Nスペ』『世界遺産』『夢の扉+』など制作/YouTube“経営者ドキュメンタリー”『野望家たち』

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