先日、ある大手YouTube制作会社の経営者と食事をしながら、僕の会社の方向性を相談した。
正直なところ、悩んでいた。
資本主義の中で会社を存続させるには、稼がなければいけない。
クリエイターとしてのプライドを下げてでも、目先の売上や再生数を追うべきなのか。
「クリエイターであるべきか、経営者であるべきか」という岐路に立たされていた。
そんな僕に、その経営者は言った。
「井上さんは、数字では測れないところで勝負するべきだ」
最初は、熱い精神論かと思った。
ところが、僕の考えは浅かった。
彼はマーケターとして、極めて合理的な話をしていたのだ。
例えば、企業の「採用動画」で考える。
・通常の広告動画:1,000回再生 → 応募10人
・ドキュメンタリー:100回再生 → 応募10人
ここまでは、数字で測ることができる。
しかし、彼はその先について語った。
「入社後の『定着率』まで追えば、企業のありのままを伝えるドキュメンタリーの方が確実に高い。でも、そんな価値は、表層的なデータには数値化されない」
振り返ってみると、僕自身、これまでドキュメンタリーを通して、いろんな人を見てきた。
取材相手が見せた一瞬の涙、覚悟を決めた横顔、悔しさに肩を震わせる後ろ姿。
そんな人間の泥臭くて、愛おしい部分を、たかが「再生回数」という無機質な数字で測れるわけがない。
「人の心」は、絶対に数値化できない。
広告は、消費されるもの。
作品は、遺るもの。
タイムラインで一瞬で消費される、打率だけの世界から、僕は抜け出す。
再生回数至上主義というアテンションエコノミーの奴隷になるのは、もうヤメた。
インプレッションが少なくても、ひとりの人生に深く刺さるものを作る。
あえて「数値化できない分野」で勝負する。
それこそが、これからの時代にクリエイターが生き残る唯一の道なのだ。




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