僕のスマホが、ずっと鳴り続けている。
ここ2、3ヶ月で急増した悩み相談、その内容はすべて同じだった。
NHK、民放、制作会社…。
局や立場の垣根を越え、20代、30代の若手から中堅たちが、まるで遭難者のように悲痛な叫びを上げてくるのだ。
思い返せばここ半年、テレビ局のコンテンツが起こした不祥事が、ネットやSNS、そして私たちの心を何度も騒がせた。
・『あのちゃんねる』の配慮の足りない対応
・『月曜から夜ふかし』の偏見を助長する編集
・『芸能人格付けチェック!お正月スペシャル』のコンプラ意識の欠如
これらは、単なるエラーではない。
視聴率とタイパ、そしてコンプライアンスの板挟みに遭い、限界まで疲弊した巨大組織の構造的な歪みが噴き出したのだと思う。
この不安は、毒のように現場へ、そしてピラミッドの下へ波及する。
これは、現場の人間からすると、単なる「一過性のミス」じゃない。
視聴率の低迷、配信のタイパ至上主義、そして厳しすぎるコンプライアンスの板挟みになって、現場にすべての歪みを押し付け続けた結果、限界を迎えて決壊した「構造的な大事故」だと思う。

そして本当にエグいのは、ここからだ。
不安とプレッシャーの波は、ピラミッドの頂点から下へ行けば行くほど、恐ろしい加速をつけて現場を直撃していく。
まず、局のプロデューサーが「絶対に炎上させるな、でも数字は取る」と言った先から「今期から予算が削られることになった」と。
そのプレッシャーをそのまま丸投げされた制作会社のディレクターは、減らされた予算と過酷なスケジュールの間で、どう安全に数字を取るかで頭が狂いそうになる。
そして、今一番シワ寄せが来ているのが、制作会社、フリーの現場ディレクター。
実は今、ADたちは働き方改革が進み、シフト制になっているところがほとんど。
働き方はホワイトで、これ自体は良いことだ。
しかし、シフトの時間を気にしてADを現場に連れていくことができない、時間通りに退勤してしまうため、残りの雑務はディレクターに回ってくる。
下は育たず、上からはプレッシャー。
ディレクターたちは裁量労働制なので、昔のテレビと変わらない仕事の仕方をしている。
そんな極限状態の精神で、怯えながら、すり減りながら作った番組が、本当に面白くなると思いますか?
「怒られないため」「炎上しないため」の守りの姿勢で作られたコンテンツは、当然エッジが削れてクオリティが下がる。
クオリティが下がれば、さらに視聴者は離れ、広告費は削られ、現場の予算はもっと減る。そしてまた、現場の不安が膨れ上がっていく。
今のテレビ業界は、この誰も抜け出せない「底なしの悪循環」の沼にどっぷりと浸かっている状態なのだ。

悩みの相談に話を戻すと。
僕は彼らに、あえて少し冷酷にも聞こえる言葉を投げかける。
「悩んでいる時点で、もう答えは出てるはず。今すぐ辞めて、外に出たほうが良い!悩むのは、お前がこの映像を作ることが、仕事自体が好きだから、未練があるから。その気持ちが、搾取されていると感じているから」
ほとんどの相談者は、反論しない。口を揃えて言うのは、「外で食べていけるのか」という不安。その気持ちは、18年間サラリーマンをしていた僕には、痛いほどよく分かる。
それでも、視点を一歩外へ向けてみてほしい。
今、動画のニーズは、これ以上にないほど、高まっている。
かつてすべての企業がホームページを持ったように、今は企業が自社のYouTubeチャンネルや動画メディアを持つのが当たり前。
しかも、一時期の「スマホで撮った動画」をあげるフェーズは終わった。発注側も「もっと本質的な、クオリティの高い映像を作りたい」と気づき始めている。
「うちの動画をテレビクオリティで作ってほしい」という依頼は山ほどある。
でも、発注する企業側も「じゃあ、どこにいる誰に頼めばいいのか分からない」「テレビ出身だからって信用できない」など、マッチングの迷子になっている。
だったら、ここに「本物のクオリティを作れるクリエイター集団」が集まっていたらどうだろう?
そこに仕事が、希望が、新しい循環が集まるのは、すごく自然なことだと思う。
僕は、この閉塞感をぶち破り、クリエイターが搾取されずに正当に評価される場を作りたい。そんな思いから「クリエイターファーストの会」を立ち上げた。
今年始めたばかりだが、すでにこのコミュニティの中だけで、仲間同士が繋がり、新しい仕事の案件がいくつも生まれて動き出している。
「あのコミュニティのメンバーに頼めば、テレビクオリティの本当に面白い動画を作ってくれる」
そんな噂が外の世界に広がれば、ここにいる仲間たちの可能性は広がっていき、悪循環に潰される必要なんてなくなる。
新しい循環を作りたい!
▼第3回クリエイターファーストの会を開催しました。

【今後の予定】
・第4回 8月中旬
nontitle総合演出:藤川悠 さま
・第5回 10月24日(土)
元構成作家・実業家:鈴木おさむ さま
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